転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


389 そっか! 無くっても大丈夫なんだね



 わーいわーいって喜んでる男の事、どうしよかなぁって顔してるおばさん。

 その二人を見てて、僕はちょっと困ったなぁって思ってるんだ。

 何でかって言うと、解決する方法が解ってるのにそれができそうにないからなんだよね。


 多分だけど、僕が新しく三輪車を作ってあげれば全部解決すると思うんだよ?

 でもね、この三輪車の輪っかに使ってるベアリングって、一個作るのに僕がいっつも持ち歩いてる鋼の玉が3つもいるんだよね。

 だからおっきな三輪車を作るだけで9個使っちゃってるし、それにおもちゃの三輪車を作る時にもちっちゃなベアリングを作ったからそのベアリングでも2個使っちゃったんだ。

「鋼の玉、もうあんまりないんだよなぁ」

 この鋼の玉はね、いろんな事に使うから鍛冶屋のおじさんによく作ってはもらってるんだよ。

 でも、ちっちゃいとは言っても鋼の玉だから結構重たいでしょ?

 だからいっつも持ち歩いてるのは10個くらいだし、お家に置いてあるのだって4つか5つくらいしかないんだ。

 でね、さっきそのうちの11個使っちゃったもんだから、もう2個か3個しか残ってないはずなんだ。

 でもそんだけだとベアリングは1個しか作れないもん。

 三輪車にはベアリングが3ついるから、作ってあげたくっても作れないんだよね。

「だめだよ! これはルディーンにいちゃの!」

 そんな訳で僕もおばさんみたいにどうしよっかなぁ? って考えてたんだけど、そしたらスティナちゃんのおっきな声が聞こえたんだよね。

 だから慌ててそっちの方を見てみたら、スティナちゃんが男の子に怒ってたんだ。 

「どうしたの? スティナちゃん」

「あのね、このこがルディーンにいちゃのちゃんりんちゃ、もってっちゃうってゆったから、スティナね、めってしてたんだよ」

 スティナちゃんの話からすると、お母さんが買ってくれるって言ったと思ってる男の子が、スティナちゃんにそう言ったみたいなんだよね。

 でも三輪車は僕が作ったものだし、他にない事をスティナちゃんは知ってるでしょ?

 だからこれは僕のだよって叱ったみたいなんだ。

「でもでも、おかあさんがかって……ぐすっ……かってくれるっていったもん! わぁーん」

「だから、これはルディーンにいちゃのなの! だからもってっちゃ、めっなの! わぁーん!」

 そしたら叱られた男の子が、お母さんが言ったもんって泣きだしちゃったんだ。

 でね、それを見たスティナちゃんまでつられて泣き出しちゃったもんだから、僕もおばさんもびっくり!

 大慌てで、二人をよしよしってしてあげたんだ。 


「ルディーン君、これってあなたが作ったのよね? 何とかもう一個、作るって訳にはいかないかしら?」

 何とか二人を泣き止ませることができたんだけど、そしたら今度はおばさんがもう一個三輪車を作れないかなぁ? って聞いてきたんだよね。

 でも、材料の鋼の玉がもうないでしょ?

 だから僕、それをおばさんに教えてあげたんだよね。

「えっ? これって、車輪に鋼の部品が使ってあるの? ちょっと見ていいかしら?」

「うん。いいよ」

 そしたらおばさんはびっくりして、三輪車の輪っかを見に行ったんだよね。

「あら、ほんと。これってもしかして、この間カールフェルトさんが作った新しい馬車の車輪と同じものなの?」

「うん! ちっちゃい玉をいっぱい入れるとね、輪っかが回りやすくなるんだよ」

 おばさんはね、こないだ僕たちが作ったお尻のいたくならない馬車の事を知ってたみたいなんだよね。

 だから僕に、この輪っかはあれに使ってるのとおんなじなの? って聞いてきたもんだから、僕はそうだよって教えてあげたんだ。

「なるほどねぇ。それなら確かに鋼を使うから、材料が足らないと言うのにも納得だわ」

 そしたらおばさんは、鋼を使ってるって言うのなら材料がないってのも解るよねって。

「でもルディーン君。この部品って、絶対必要なの?」

「なんで?」
 
「だって今までの馬車にはこんなもの、ついてないでしょ? それならなくても大丈夫なんじゃないかしら?」

 でもね、おばさんはベアリングは必要ないんじゃないかなぁ? って言うんだよね。

 だって今まで村で使ってた馬車にはベアリングなんてついてなかったし、僕が作った三輪車な石でできてるけど小っちゃいから馬車ほど重くないでしょ?

 だからこんなのついてなくっても、ちゃんと走るんじゃないかなぁって、おばさんは言うんだ。

「そっか。そう言えば僕が前に作った箱型の魔道草刈り機だって、輪っかにこんなのつけてなかったっけ」

 それを聞いて思い出したんだけど、昔いっぱい作った草刈り機も輪っかにはベアリングなんてついてなかったもん。

 あれも今僕がスティナちゃんを乗っけてあげてる三輪車とおんなじで押して使うもんなんだから、男の子を乗っけても大人のおばさんが押すんだったらベアリングなんてなくっても大丈夫なのかも?

「そうでしょ? それなら車輪に鋼なんて使わなくても、作れるんじゃないかしら?」

「うん! 草刈り機とおんなじようにすればいいんだったら、すぐに作れるよ!」

 おばさんにベアリングを使わなくっていいんだよって教えてもらった僕は、輪っかに使う木材を作業部屋から持ってくると早速ベアリングがついてない石の三輪車をクリエイト魔法で作ってみたんだ。

「ねぇ、おばさん。これ、ちゃんと押せる?」

「そうねぇ。これくらいだったらうちの子を乗せても押せそうだけど……でも、このままだと腰が痛くなっちゃいそうよねぇ」

 そう言えば僕はまだ体がそんなにおっきくないから大丈夫だけど、大人の人だと腰を曲げないと押せないもんね。

 でもさ、それだとおばさんの言う通り、男の子を乗っけて押してるうちに腰が痛くなっちゃうかも?

「じゃあさ、草刈り機みたいに、押すとこを作った方がいい?」

「ええ、そうしてもらえると助かるわ」

 おばさんも作ってって言ったもんだから、僕は三輪車の後ろにT字型の押すとこをつけてあげたんだよね。

 そしたらおばさんも、これだったら楽に押せるねって大喜び。

「坊や、ちょっとこれに乗ってみて」

「いいの? やったぁ!」

 さっそく男の子を乗っけて、押してみたんだよね。

「うん。思った通り、これくらいの重さなら簡単に押して歩けそうよ」

 そしたらちゃんと押せたみたいで、おばさんもひと安心。

「おかあさん、もっとはやくして!」

「ええ、いいわよ」

 それにね、乗ってる男の子も大喜びでおばさんにもっと早く押してって頼んだんだもんだから、おばさんはちょっと早足になって三輪車を押したんだよ。

 でもその時。

「あっ!」

 男の子がハンドルを左っ側におっきく動かしたもんだから、三輪車が傾いて後ろについてる右っ側の輪っかが浮き上がっちゃったんだ。

 これ、さっきスティナちゃんが乗ってる時も同じような事があったんだけど、僕は椅子の背もたれんとこを持ってるからこんな風にはならなかったんだよね。

 でもおばさんはT字型の押すとこを持ってるだけでしょ?

 だから僕、そのまんま三輪車が倒れちゃう! って思ったんだけど、

「おっと、危ない」

 そしたらおばさんが、浮き上がった輪っかを足で踏んで止めちゃったんだ。

「こら! そんなに大きく曲がろうとしたら、危ないでしょ」

「ごめんなさい、おかあさん」

 でね、三輪車が止まったのを確認したおばさんは、男の子をハンドルをそんなおっきく動かしちゃダメでしょって叱ってたんだよね。

「ルディーンにいちゃ、あのこもスティナとおんなじだね」

 それを見たスティナちゃんは、さっき僕におんなじことを言われたのを思い出して大笑いしてたんだ。

 でもね、僕はそれどころじゃなかったんだよね。

 何でかって言うと、さっきおばさんがやった事を見てあることに気が付いたからなんだ。

「そっか。あんな風にすればブレーキがかかるのか」

 さっきおばさんは輪っかに足を乗っけて三輪車を止めたでしょ?

 それを見て思ったんだけど、あんな風に後ろの二つの輪っかの上から押さえつけるようなものを作ればブレーキになるんじゃないかなぁ?

「どうやればいいかまではまだ解んないけど、ブレーキはこれで何とかなるかも?」

 そう思った僕は一人でにっこりしてたんだけど、そこに男の子を乗っけた三輪車を押したおばさんが来て話しかけてきたんだ。

「ねぇ、ルディーン君。このおもちゃを押す取っ手がこの形だと、さっきみたいに転びそうになるでしょ? だから軸は1本じゃなくって、後ろの両輪の横から2本延ばすような形にした方がいいんじゃないかしら?」

「そっか! そうすれば、輪っかが浮いても大丈夫だもんね」

 それだったら浮いた方を上から押さえるだけでいいよね。

 そう思った僕は、早速三輪車の取っ手を作り変えようと思ったんだけど、

「ああ、うちの子は一度倒れそうになって懲りただろうから、これはこのままでもいいわ。でも次を作る時からはそうした方がいいわよ」

 でもさ、おばさんはそんまんまでいいよって笑ったんだよね。

「あと、これの代金だけど」

「お金? 別にいいよ。だって輪っかは資材置き場のを使ったし、他はお庭の土しか使ってないもん」

 それでね、三輪車を作ってもらったからそのお金を払うねって。

 でもこれ、ベアリングをつけなかったから作るのにお金なんてかかってないでしょ?

 だからいらないよって言ったんだけど、おばさんはダメって言うんだ。

「それはダメよ。これからの事もあるしね。でも君に直接渡すわけにはいかないから、後でシーラさんに話をしておくわね」

 でね、おばさんはそう言うと、男の子を乗っけた三輪車を押しながら帰っていったんだ。

「いっちゃったね」

「うん。でも、さっき言ってたこれからの事って、何だろう?」

 僕はね、さっきおばさんが言ってた、これからの事があるからお金は払わないとダメなんだよの意味が解んなかったんだ。

 でもそれからちょっとして、何でそんな事を言ったのかがよく解ったんだ。

「ルディーン。何かを作る時は、ちゃんと後の事を考えないとダメだろ」

「うん……」

 あの時、おばさんは男の子を乗っけたまんま帰ってったでしょ?

 だからそれを見た他の村の子たちが、それを見てあれは何だ? って事になったみたいなんだよね。

 でね、男の子が僕んちで買ってもらったんだよって言ったもんだから、他の子たちも欲しいって言い出しちゃったみたい。

「そろそろみんなも時間ができそうだったけど、しばらくの間は狩りに行けそうにないな」

「え〜!」

「仕方ないだろ。このおもちゃ、お前にしか作れないんだから」

 いっぺんにみんなの分は作れないけど、それでも近所の子たちの分だけでも作んなきゃダメって事で、僕はお父さんからしばらく森での狩りはお預けって言われちゃったんだ。

 わぁ〜ん!



 一人に作ってあげたら、こうなるのは当たり前ですよね。なにせ今までになかった、小さな子供が乗って遊ぶおもちゃなのですから。

 それにこれ、乗って遊ぶのは皆小さな子たちですからガマンが効きません。

 なのでルディーン君はお父さんに考え無しに新しいものを作るなと怒られて、可哀そうな事に狩りの延期を言い渡されてしまいました。

 まぁ、自業自得なんですけどねw


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